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山崎浩二のSmall Beauty World

第93回 プラカット・アバター

2023年10月 公開

オス同士で激しく闘争するアバター。この個体は体側の模様の入り方、各ヒレのプロポーションといい非の打ち所のない個体と言えるだろう。2023年前半期ではかなりの高額個体であった。体側に入る2つのハート模様がチャーミングである。

アバターと言うベタの品種は、誰もが分かるように有名映画のタイトルから名付けられたものである。特にインドネシアで作出された品種に多いのだが、アバターの他ヘルボーイやアルマゲドンなど映画のタイトルから名付けられている。ベタと言えばタイと多くの人が思うように、長らくベタの本場はタイであった。ところが東南アジアで熱帯魚の養殖に関してはタイと双璧を成すインドネシアもベタにかなり力を入れており、多くの魅力的な品種を生み出している。

古くはクラウンテールもインドネシアで洗練された品種が元になっている。数年前にはタイでもインドネシア産のベタが持て囃された時期があり、その頃はインドネシア産のベタはインドーと呼ばれていた。インドーとはタイ語でインドネシアの事を意味しており、インドの事ではない。当時インド産のベタと勘違いしていた日本人もいたようである(笑)

アバター初期に出回った典型的な個体である。ダーク系のブラックボディに不規則に入るブルーの模様は絶妙なバランスだ。しかし、このような個体の体色は非常に安定しておらず、時間の経過と共に驚く程の変化を遂げる。 それが吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知るなのである。
ブルーのヒレと体側のスポット模様が美しい個体である。こうしたアバターの体側のスポット模様は、多過ぎても少な過ぎても美しくない。絶妙なバランスが大切なのでが、作出にはこれが難しくて量産が出来ないのである。

現在ではインドネシア産のベタの良い部分を取り込んで、タイでは独自に進化させており、インドーの名前を聞く事は無くなっている。余談になるが、2022年にインドネシア産?の遺伝子組換えのベタが世界中に出荷されたようだ。

グリーンアイとかグリーンハルクと名付けらたその品種は、平常時でも眼が蛍光グリーンに輝き、体はブラックライトを当てるとやはり蛍光グリーンに光るようであった。日本では当然のように遺伝子組み換えの魚はご法度である。それならタイでその魚を記録として撮影しようと考え、知り合いに問い合わせてみた。
ところがタイでも遺伝子組み換えのベタは非合法だったようで、摘発される前に魚を入手したブリーダー達は廃棄処分にしたと言う話を聞いた。
ゼブラダニオやブラックテトラ始め、市場に山程遺伝子組み換えの魚が販売されているタイでも、国魚のベタに関しては特別なようである。

初期のアバターはブラックとブルーの個体が多かったが、しばらくすると写真のようにヒレに赤が入る個体も増えて来た。更に派手で美しくなったと感じる人と、派手過ぎて好みでないと感じた人がいたようである。
まだ色彩も完成し切っていない若いアバターのオス個体である。他のベタと同様にアバターも成長に連れて体側の模様やヒレの色彩は大きく変化する。若い個体は比較的安価で入手し易いが、後に体色が変化すると言うリスク?もあるのは知っておきたい。

話は戻って、今回紹介するアバターと言う品種は、新型コロナに全世界が翻弄され始めた2020年頃には、ネットでその姿を見かけるようになっていたと記憶している。
その特徴的な姿が非常に魅力的な品種で、ベタ好きのマニアなら誰もが欲しがるような魚なのだが、当時はネットで少数が取り引きされているだけで、一般の市場にはほとんど流れて来なかった。そのため実物を目にする機会はほとんど無かった。

こうした魅力的な新品種や個性的な一品モノの個体は、かなり高価で販売されており、タイではショップよりもフェイスブック等のSNSを利用しての個人間のネット取り引きが主体のようだ。
と言うような理由で、当初はチャトチャックにあるようなベタの専門店でも実際の姿を見る機会は少なかったのだが、2022年頃からはショップで見かける機会が増えて来た。
とはいえ、希少で人気の高い品種なので、良い個体は店に並ぶと直ぐに売れてしまう状態で、なおかつ値段もかなり高価であった。

ブラックの地色にスッキリと入る少なめのスポットが印象的な個体である。この若い個体は、成長に連れスポット模様が美しく変化することを期待して入手したものである。このような変化を楽しめるのもアバターの魅力と言える。
ヒレや体側のブルーが美しいアバターのメス個体。アバターのような人気のあるベタの品種の場合、オス個体よりもメス個体の方が値段が高い場合も多い。メスの良個体からは美しい次世代が取れる確率も高いのであろう。

ブラックの地色に光沢のあるブルースポットが散りばめられたのがアバターの典型的な表現型であるが、基本的にダーク系のボディに光沢のあるスポットが多数バランス良く散りばめられていればアバターと呼んで差し支えないようだ。
基本はギャラクシー系の発展形みたいなものなので、ブラックギャラクシーやブラックスター等の名称で販売されている事もある。

やや紫がかったブルーとブラック、アクセント的に入るレッドが美しいアバターのメス個体。人気のある品種の場合、ブリーダーも初期はメス個体を放出したがらなくて、市場に出回ったとしても高価である事が多い。
ブルーとブラックの典型的なバターではなく、シルバースポットの入るタイプのアバターである。万人受けのするブルー&ブラックのアバターよりも玄人受けのする個体と言えるだろう。

2023年のタイのベタ市場でのアバターの様子であるが、盛んにブリーディングされた事で市場へ供給量も増えた事により値段も落ち着き、入手も難しくなくなっている。
ギャラクシーの時もそうだったのだが、ベタのスポット模様と言うのは固定するのが難しいようで、美しい個体を得るには多数の個体を繁殖させ、その中から良い個体を選別する必要がある。
そのため簡単には値段も下がらないのである。

ブラックとブルーだけだった配色に他の色も加わって、最近はより派手なアバターも作出されているが、今後どのように進化して行くのだろうか?

シルバースポットタイプのアバターのメス個体。体型や色彩も美しく、この個体を繁殖に使えば次世代に美しい個体が期待出来そうである。
アバターとしてはかなり特殊な色彩パターンをした個体である。 ダークボディに体側に美パターンのスポット模様と言うアバターは、このように色彩も変化していく事であろう。

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