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山崎浩二のSmall Beauty World

第99回 スプレンデンス・キャンディ

典型的なキャンディの色彩を見せるスプレンデンス・キャンディのオス個体。尾ビレの伸長具合は顕著ではないが、ややスペード状なのは、スプレンデンスから引き継いでいるのだろう。

ここのところベタの本場タイのベタ市場を見ても、小さなニューフェイスの登場はあるものの、以前のコイベタやキャンディのような大型のニューフェイスの登場は見られない。数年前は心ときめかせて見ていたキャンディも、量産された事から以前は高価で手が出なかったような個体も今では気軽に購入出来るようになっている。黒地にブルーのスポット模様が美しく初登場当時はアバターと呼ばれていた品種も、今ではブラックスターと言う呼び名の方がタイでは定着したようである。こちらはハイグレードな個体は今でもそこそこの値段を保っている。

キャンディと言うよりもコイベタ風の色彩を有するスプレンデンス・キャンディのオス個体。キャンディはコイベタから作出されたので、その色彩を引き継いでいても不思議ではない。
かなり特徴的な外見を見せるスプレンデンス・キャンディのオス個体。伸長した尾ビレの後端や尻ビレの後端が赤く色付いているところは、インベリスの系統を彷彿とさせるが、その交配歴は謎である。

初登場当時は高価な事で話題になったタイフラッグも今では、かなり手頃な値段になっていて、全く手が届かない存在ではなくなっている。2024年の春のタイのベタ・シーンを見ても、プラカットではこの停滞感はそのままであった。このコラムでは、タイで登場した新品種を出来るだけ早く紹介するように心がけているが、流石にこの状況だとプラカットで紹介するようなネタが無くて残念である。このようなタイのベタシーンであるが、相変わらず新品種が登場している分野が存在する。それはワイルド系の改良品種である。

見事な丹頂の色彩を有するスプレンデンス・キャンディのオス個体。白地に頭部の赤も見事であるが、スペード状に伸長した尾ビレの赤もこの個体を更に魅力的にしている。日本人なら誰もが好む個体であろう。

以前はスプレンデンスのベンジャロン系の色彩変異が主流だったのだが、最近は既存のプラカットの血筋を導入したり、スマラグディナなどの他種とのハイブリッドの品種も登場している。こうしたワイルド系の改良品種は万人受けする訳ではないが、一定数の愛好家が存在するようである。とは言え、ちょっと変わった色彩やフォルムが市場で受けるので、常に新しい品種が求められ、既存の品種は蔑ろにされている雰囲気が無くも無い。極端な話、一年前にリリースされた品種が維持されておらず、それらが店頭に並んでいないのである。

このコラムで以前紹介したスマラグディナ・ギター・カッパーなどは現在チャトチャックではほぼ見かけなくなっている。かなり良い新品種だと思っていたので寂しい限りである。その代わりに新しい品種が次々にリリースされている訳であるが、この中で数年後にも残っている品種はあるのだろうか?今回はこの新品種の中から、スプレンデンス・キャンディを紹介しよう。

典型的なキャンディの色彩を有するスプレンデンス・キャンディのオス個体。たぶん作出者が目指していた表現型はこのタイプなのだろう。キャンディの色彩も多彩なので、今後の姿が楽しみである。
キャンディと言うよりも完全にコイベタ寄りの表現型を見せるスプレンデンス・キャンディのオス個体。細身の体型にスペード状の尾ビレや各ヒレの伸長具合いも美しく、かなり魅力的な個体である。

これは名前の通り、ワイルド系のスプレンデンスにプラカットのキャンディを交配したものである。作出者に聞いたところ、オスのスプレンデンスにメスのキャンディを交配し、ワイルド系の体型に戻すために3代かかったそうである。体型は尾ビレの中央が伸長した典型的なベンジャロン系であるが、その色彩はかなり変化に富んでいる。誰が見てもキャンディと分かる個体もいるが、言われなければキャンディとは思えないようなどちらかと言うとコイベタの系統のような色彩の個体も混ざっているのだ。このバラ付きを紹介するために、いつもよりも多くのモデル個体を購入する事になってしまったが、ショップに行く度に目新しい色彩の個体がいると無視出来ないのである。店主もそれを見透かすように新しい個体を薦めて来る。

スプレンデンス・キャンディのメス個体。通常新品種のリリース時はメスは販売されないのだが、間違いなく当てメスではないであろうメス個体が販売されていた。
多彩な表現型を見せるオス個体同様に、メス個体も個体により色彩は異なっている。このメス個体は腹部に薄らと卵巣も透けて見えており、すぐに繁殖に使えるだろう。

特に今回は典型的なキャンディの色彩以外の個体がかなり魅力的な色彩の個体ばかりだったので、尚更である。これだけ表現型の違う個体がいると、次世代に使う雌雄の選択はかなり難しいと思われる。あくまでキャンディの表現型に拘るなら簡単だが、それ以外の個体も捨てがたい魅力を有するので、ブリーダーの選択眼に期待したい。1年後のこの品種の姿が楽しみである。

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