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大美賀隆のステップアップ・アクアリウム

第1回 赤いペンシルフィッシュ

協力/Aqua-F東京店

闘争するアークレッドペンシルフィッシュのオスたち。オス同士が繰り広げるフィンスプレッディング(ヒレを広げて体を大きく見せる行動)は、ペンシルフィッシュ飼育の見どころの一つ。この際にオスは自らの体を真っ赤に染め上げ最も美しい姿となります。

はじめに

新連載の第1回目で取り上げるのは赤いペンシルフィッシュ(以下ペンシル)たち。ちょうどこの企画が動き出した頃に観賞魚界は大きなニュースに沸き立ちました。それは南米のペルーで発見された真っ赤なペンシルが日本にやって来るというもの。すでにインターネットではその美しい姿が知られていたこともあり、ぜひ飼ってみたいというアクアリストも多くいたと思います。赤いペンシルといえばペンシルのなかでもダントツの美しさと高い知名度を誇るスターフィッシュであるアークレッドペンシルが有名ですよね。そこで今回は新顔のペンシルの日本初登場に合わせてアークレッドペンシルや近縁のブラッドレッドペンシルなどを含め、赤いペンシルたちの魅力や飼育について紹介しましょう。

アマゾン川での思い出

本編に入る前にアマゾン川で会ったペンシルの思い出をちょっと。私が初めてアマゾン川を訪れたのは今から26年前の1996年のこと。大河アマゾンの北を流れる大きな支流ネグロ川が合流する地点に栄える都市マナウスを訪れ、周辺の水域を船で探索している際に水上売店に立ち寄りました。アマゾン川流域は水上交通が発達していて川面に浮かぶガソリンスタンドやレストラン、売店などがよく見られます。

そんな水上売店の周りでは熱帯魚が見られることもあり目を凝らしていると、1匹のペンシルフィッシュがこちらに近付いて来るではありませんか。好奇心旺盛な様子で近付いては止まりを繰り返し周囲をウロウロ。やがて飽きたのか、どこかに姿を消してしまいました。

このペンシル、ベックフォルディかワンラインペンシルあたりだったと思いますが意外だったのは、大きな川で単独行動していたこと。もしかしたら近くに仲間がいたのかもしれませんが。実際にペンシルを飼育してみると縄張りを主張する種も多く、現地では単独行動している種が多いのかも。また、どの種も好奇心が旺盛で、なかなか賢い魚だということが実感できます。今でもペンシルを見ると思い出すアマゾン川での一コマでした。

マナウス近郊のアマゾン川に浮かぶガソリンスタンド。水上交通が発達しているアマゾン川流域ではよく見られる光景。このような水上の構造物の周りに熱帯魚が身を寄せていることもあります。

ペンシルフィッシュって?

ビギナーのなかにはペンシルフィッシュといってもよくわからない方もいるでしょう。そこでペンシルのプロフィールを紹介しておきましょう。

ペンシルは南米に分布するカラシンの仲間です。広義ではネオンテトラやピラニアなどのカラシン類に近縁で、分類学的にはカラシン目(Characiformes)、レビアシナ科(Lebiasinidae)、ピリューリナ亜科(Pyrrhulininae)、ナノストムス属(Nannostomus)の魚となります。

ペンシルフィッシというと日本では古くからナノストムス·エクエス(Nannostomus eques)のことを指しますが、英名ではブラウンペンシルフィッシュ(Brown Pencilfish)と呼ばれます。このエクエスやワンラインペンシルと呼ばれるナノストムス・ユニファスキアトゥス(Nannostomus unifasciatus)は細長い体を持ち斜めに泳ぐのが特徴で、その様子からペンシルの通称名が付けられたと思われます。なお、エクエスやワンラインペンシルなどをナノブリコン属(Nannobrycon)として別属とする説もあります。

しかし、です。今回紹介する赤いペンシルたちは細長い体でもなく斜めにも泳ぎません。それなのになぜペンシルと呼ばれるのかというと、斜めに泳ぐエクエスやワンラインペンシルと近縁であるため慣例的に“ペンシル”の名が付けられているからなのです。

現在ペンシルの仲間は20種近くが知られており、全長2㎝ほどの超小型種から全長7㎝ほどになるものまで様々。ペンシルと名が付く種もたくさん知られています(英名や通称名が付いていない種もいます)。また、未だ学名(世界共通の学術的名称)が付けられていないものも多くいます。その最たるものが今回紹介する新顔のクリムゾンレッドペンシルです。広い南米にはまだまだ私たちが見たこともないペンシルの仲間が息付いていると想像できます。

ペンシルフィッシュ(ナノストムス·エクエス)
Nannostomus eques
日本では古くからペンシルフィッシュの名で親しまれていますが、ペンシルフィッシュの仲間が増えるにつれて種名のエクエスで呼ばれることも多くなりました。斜めに泳ぐ様子がとてもユーモラスで人気の高い小型魚です。全長約5㎝。アマゾン川中~上流域に分布。
ワンラインペンシル(ナノストムス·ユニファスキアトゥス)
Nannostomus unifasciatus
エクエスと同様に斜めに泳ぐのが特徴。エクエスに比べると流通量は少なく入手はやや難しいですが、見付けたらぜひ飼育してその楽しい泳ぎを観察してみましょう。全長約5㎝。アマゾン川流域など広範に分布。
ナノストムス·エスペイ
Nannostomus espei
これもペンシルフィッシュの仲間ですが斜めには泳ぎません。体側に黒斑が斜めに並ぶおしゃれな模様でとても人気があります。全長約4㎝。ガイアナに分布。

ペンシルのスターたち ~各種の特徴を知ろう~

今回紹介するのは赤いペンシルたち。アークレッドペンシル、ブラッドレッドペンシル、そして新顔のクリムゾンレッドペンシル、クリムゾンブラックペンシルの4種。いずれも赤い色彩を持ちずんぐりした体型でよく似ていますが、系統は異なるのではないかというのが私の見解です。各種の習性や体型、メスの色彩などから比較考察すると、ブラッドレッドペンシルやクリムゾンレッドペンシル、クリムゾンブラックペンシルはドワーフペンシル(ナノストムス·マジナトゥス)に近縁な種であり、アークレッドペンシルはそれらとは異なる別系統の種なのではないかと考えています。いずれの種もオスとメスでは体色が異なり、成熟すると性的二型が顕著で、色彩豊かなオスに対してメスは控えめです。

ドワーフペンシルフィッシュ(ナノストムス·マジナトゥス)
Nannostomus marginatus
アクアリウムでは古くから知られている小型のペンシル。ずんぐりとした体型で体側に3本の黒いラインが入る。近縁種が多数存在し今回紹介するブラッドレッドペンシルやクリムゾンレッドペンシルも本種の近縁だと思われます。全長約3㎝。アマゾン川流域に広範に分布。

ペンシル界のスーパースター
アークレッドペンシルフィッシュ Ark red pencilfish

ギンギンに発色したオスの成魚。闘争時や縄張りを主張している時などに体色が濃くなります。鮮紅色のボディに漆黒のラインがバシッと決まっていますね!

アークレッドペンシルフィッシュ
Nannostomus mortenthaleri
全長:約3.5㎝ 分布:ペルー 英名:Coral red pencilfish
日本での通称名はアークレッドペンシルフィッシュ。2000年にペルーから日本へやって来た美種で、鮮紅色のボディに黒いラインが走るという衝撃的な色彩で一躍ペンシルのスターとなりました。性格はきつく力の拮抗したオス同士では激しく争いますが、闘争時には体色が一層濃く美しくなるため本種の美しい色彩を引き出すにはオスを複数混泳させて飼育すると良いでしょう。

ヒレを大きく開いて自分を誇示するフィンスプレッディングを見せるオス。
2匹に力の差が少ないと闘争はより激しく長い時間に及ぶことも。
興奮していない時は体色がやや薄くなります。また、他に強いオスがいる場合は体色があまり濃くならないことも。
寝ているアークレッドペンシルのオス。夜間は体色が薄くなります。どの種も夜間は体色が薄くなったり斑状になりますが、病気ではありません。
オスの顔アップ。カラシンの仲間は歯が発達しているのが特徴でアークレッドペンシルはけっこう歯が目立ちますね。闘争時は他の個体のヒレを噛むこともあります。
アークレッドペンシルのメス。メスはオスのように発色はしませんが、気分によっては全身が赤っぽくなり興奮すると黒味を増します。

アートなカラーパターンが魅力
ブラッドレッドペンシルフィッシュ Blood red pencilfish

美しく発色したオスの成魚。発色具合は体調のバロメーターでもあり、赤色が鮮やかで美しい個体は元気で体調が良いといえます。

ブラッドレッドペンシル
Nannostomus rubrocaudatus
全長:約3㎝ 分布:ペルー 英名:Purple Pencilfish
アークレッドペンシルに続いてペルーから日本にもたらされました。日本での通称名はブラッドレッドペンシルフィッシュ。他の2種に比べると派手さでは劣ると思われがちですが、筆で塗ったような鮮やかな赤い色彩が斬新で、とても個性的なペンシルです。アークレッドペンシルに比べると温和なものの、少数で飼育すると強いオスが弱い個体を追い回すくらいの気の強さは見せます。

網で掬った後や怯えたり警戒している時には体色が薄くなります。
ブラッドレッドペンシルのオスの顔アップ。アークレッドペンシルに比べると歯は小さいですね。
成熟したメスでは腹部にわずかに赤い色彩が入ることも。体側のラインは3本ともほぼ同じ太さで背ビレとしりビレには赤い色彩が入りますが、腹ビレには入りません。写真のメスは抱卵しているらしく腹部がふっくらして黄色い卵が透けて見えます。

2022年春、新たなスターが誕生
クリムゾンレッドペンシルフィッシュ Crimson red pencilfish

クリムゾンレッドペンシルのオス。熱帯魚業界に驚きがまた一つ。このベタ赤は必見です! 今でもこんな魚を届けてくれる南米の奥深さに敬服。

クリムゾンレッドペンシル
Nannostomus sp.
全長 約3㎝ 分布 ペルー
2022年の春、ペルーより日本初上陸を果たした魅力的なペンシル。日本での通称名はクリムゾンレッドペンシルフィッシュ。アークレッドペンシルよりも小型で体型やメスの色彩などからドワーフペンシルに近縁だと思われます。深紅の色彩で染め上げたボディは見事の一言でまるで婚姻色を出した紅鮭のようです。アークレッドペンシルとスターの座を二分する存在となるのは間違いないでしょう。通常ペンシルの多くは網で掬うなどしてストレスを与えると体色が薄くなることが多いのですが、クリムゾンレッドペンシルはストレスを与えても体色にあまり変化が見られずこれも大きな特徴といえます。また、オスを複数飼育すると顔まで赤くなりさらに美しさを増します。そこで本種を飼育する際は可能な限りオスを複数で飼育することをおすすめします。

オスを複数で飼育すると強い個体は顔まで真っ赤になります。(写真提供:Aqua-F東京店)
オスの顔アップ。アークレッドペンシルに比べるとだいぶ歯が小さいですね。
ヒレを広げてメスにアピールするオス。性的二型が顕著でメスに比べるとオスの派手さが目を引きますね。
メスは赤くなりません。体側中央のラインがやや太く、背ビレやしりビレには赤い色彩が目立ち腹ビレの付け根にも若干赤が入ります。

ブラックラインが映える
クリムゾンブラックペンシルフィッシュ Crimson Black pencilfish

ちょうどブラッドレッドペンシルの中央のブラックラインが消えたようなパターンが印象的ですね。(写真提供:Aqua-F東京店)

Nannostomus sp.
全長 約3㎝ 分布 ペルー
クリムゾンレッドペンシルに次いでペルーよりやって来た新顔のペンシルフィッシュです。日本での通称名はクリムゾンブラックペンシルフィッシュ。現地輸出業者の情報発信によりインターネットではすでにこのペンシルの存在が知られていましたが、実際には未知のクリムゾンレッドペンシルが先に輸入されました。背部と腹部に明瞭なブラックラインが入り、そのラインに囲まれた体側が真っ赤に染まります。オス同士は闘争するものの、アークレッドペンシルのような激しさはないようです。

一番奥の個体がメス。メスには赤い色彩が入らず体側には3本のブラックラインが入ります。(写真提供Aqua-F東京店)

流通と入手

2022年現在、アークレッドペンシルとブラッドレッドペンシルはペンシルのなかでも流通量が多く、入手は難しくないはずです。ペアで売られていることも多いので使用する水槽のサイズに合わせて飼育数を決めましょう。日本に紹介されて間もないクリムゾンレッドペンシルやクリムゾンブラックペンシルはまだまだ流通量が少なく入手は難しいかもしれません。価格も高めなので飼育に自信がない場合は無理をせず、まずはよく似たブラッドレッドペンシルなどで飼育のコツをつかんでみるのもおすすめですよ。

飼育のポイント

ポイントを押さえておけば各種とも同じ方法で飼育することができます。他種に比べてアークレッドペンシルは体が一回り大きくなり気が強いので、そのあたりを考慮して大きめの水槽で飼育すると良いでしょう。またブラッドレッドペンシルとクリムゾンレッドペンシル、クリムゾンブラックペンシルはメスがよく似ていて混泳させると判別がしづらくなるため、混泳は避けたほうが無難ですね。

アークレッドペンシルの飼育例

アークレッドペンシルのために流木と水草でレイアウトしました。後景にマツモを繁茂させて緑のカーテンを演出。流木や水草を多めに配置して弱い個体が隠れられる場所を作るのがポイントです。

水槽の全景。魚が泳ぐスペースと隠れられる場所をバランス良く作るのがおすすめ。

■飼育DATA■
水槽:幅450×奥行き220×高さ330mm/約27.8L
フィルター:水作スペースパワーフィットプラス M ホワイト
ろ材:水作スペースパワーフィットプラス交換ろ材
底床:弱酸性を好む魚のソイルⅡ(0.5L×5袋使用)
照明:ライトアップ 400 ホワイト
水温:26℃
餌:フレークや顆粒タイプのフードを1日に1~2回
飼育生物:アークレッドペンシル(オス4匹、メス2匹)
水草:マツモ、エキノドルス・ウルグアイエンシス
リーヴァ450N 6点セット(水槽/フタ/保護マット/フィルター/LEDライト/カルキ抜き)を使用

●水槽
幅40㎝クラス以上の水槽がおすすめです。特にアークレッドペンシルは小さい水槽で複数を飼育すると弱い個体がいつも隠れていて観賞しづらくなるというケースが見られます。そこで複数を飼育する場合はできるだけ大きめの水槽で飼育するのがポイント。水槽サイズと各種の飼育数の目安は<表>を参照してください。ちなみに今回の飼育例では幅450×奥行き220×高さ330mmの水槽を使用し、6匹のアークレッドペンシルを飼育しています。

◆水槽サイズと飼育数の目安
※個体同士の相性や水槽内のレイアウトによって飼育数を要調整

●水質
今回紹介するペンシルは弱酸性の軟水を好みます。水質の目安となるpHでいえば、pH5台~pH6台を維持できれば理想的です。ただし私の経験ではアークレッドペンシルは中性付近であっても清浄な水を維持できれば問題なく、pH7.5付近でも長期間状態良く飼育できました。紹介されて間もないクリムゾンレッドペンシルはまだまだ飼育データが少ないため、長期飼育をするならまずは弱酸性を維持することが大切です。また飼育時には定期的に水質を計測して水槽の状態を把握することもポイントです。

●フィルター(ろ過器)
どのようなタイプのフィルターも使用可能です。外部式や内部式、外掛け式、上部式など水槽サイズに合ったものを使用しましょう。魚の飼育数が多い場合は水が汚れがちになるため、ろ過面積が大きいものが有効です。また、あまりに強い水流は好まないため流水量を調節できる機能の付いたフィルターを使って緩やかな水流を演出するのもおすすめです。

●ろ材
ろ材の種類によっては水質に影響を与えるものもあるため、水質をアルカリ性にしないものを選びます。個人的にはウールマットを使うことが多く、どのようなタイプのフィルターにも使える汎用性と安価なことから重宝しています。

●底砂
底砂のチョイスは重要です。底砂によっては水質に影響を与えるものもあり、水質をアルカリ性にするものは使用を避けるようにしましょう。水質を弱酸性にするものや水質に影響を及ぼさないものを使うと良いでしょう。どれを選んだらいいか迷う場合はソイルと呼ばれる土を加工したタイプがおすすめです。商品によって水質を弱酸性にしたり中性にしたりするものがあり、ペンシルの飼育には弱酸性にするものが適しています。

●照明
魚を観察したり水草を育成するのに必用です。水槽サイズに合ったLEDライトなどを使ってペンシルを美しく演出してみましょう。照射時間の目安は6~10時間ほど。「LEDスマートタイマー」などのタイマーを使って照射時間をコントロールできれば便利ですよ。

●水温
25~26℃を維持できれば問題ありません。熱帯魚飼育で特に問題となるのは夏場の高水温です。水温30℃以上の日が続くと魚は体調を崩しやすく病気の発症原因にもなりますから、夏場は28℃以上にならないような工夫が必用です。「ミニクールファン USBstyle」などの水槽用の冷却ファンを使用したり高温になりがちな部屋ではエアコンを使用するなどして好適な水温維持を心がけましょう。

水温は毎日チェックしましょう。写真は水槽のガラス面に貼るタイプの水温計「貼るテンプ M」。

●餌
いずれの種も簡単に人工飼料に餌付くので餌で苦労することがないのがうれしいですね。浮上性の顆粒タイプやフレークフードなどが与えやすくおすすめです。ただし口が小さいので粒が大きな餌は苦手です。小粒のものを選んだり大きなものは指で潰して小さくしてから与えます。また、ブラインシュリンプの幼生なども喜んで食べてくれるため時折与えるのも良いでしょう。けっこう食いしん坊でたくさん与えると、お腹がパンパンに膨れるまで食べてしまいます。餌をたくさん与え続けると体調を崩すことがあるので、できればお腹が膨れないように1日数回に分けて適量を与えるか、こまめに与えられない場合は1日1~2回ほどややお腹がふっくらするくらい与えるようにします。

餌を与えると興奮する個体が多くオスばかりかメスも強気になってフィンスプレッディングする様子が見られることもありますよ。摂餌行動は魚の健康のバロメーターでもあり、餌をよく食べる個体は健康で元気。逆に餌に見向きもせずにじっとしている個体は、体調を崩しているか病気の可能性もあります。餌やりの際はペンシルたちの様子をよく観察しましょう。

ペンシルの仲間は水槽内に発生したコケ(藻類)を食べることもありますが、コケ取り生物としての能力はあまり高くはありません。コケを目立たなくするにはヤマトヌマエビやオトシンクルスなどを同居させると良いですね。

●その他必要な器具類
魚の飼育数が多い場合や水面にバイオフィルムが発生する場合はエアレーションが有効です。エアポンプやエアチューブ、エアストーンなどを利用してエアレーションをしましょう。

●水槽内のレイアウト
ペンシルを複数飼育する場合は水槽内のレイアウトがポイントになります。特にオスを複数飼育すると頻繁に闘争するため、弱い個体が追われたときに隠れられる場所、物陰で一息付けるような場所を作りましょう。流木や水草などを多めに配置するだけでOKですが、レイアウトに自信がある人は複数の水草を使用して水草レイアウトを作ってみましょう。ただし隠れる場所があることが大切ですから、背の高い水草を組み合わせて水草の森を作るなど工夫してみてください。今回の飼育例では大ぶりな流木を配置し、栽培が容易なマツモを水槽の後景に繁茂させて水草のカーテンを作っていますがアークレッドペンシルたちの良い隠れ場所になっているようです。

マツモには根がなく底床に植えても浮力で抜けてしまことがあります。そこで数本を専用のおもり「水草の安心おもり」を使って植え込むのがおすすめ。マツモが伸びてきたら切り詰めて再度おもりを使って植え直すようにします。

●換水や日常の管理
ガラス面にコケが目立ったり底床の汚れが目立ってきたらコケ取りグッズや底床用のクリーナーなどを使って掃除をし、その際に換水も行うと良いでしょう。こまめに掃除をしつつ少量ずつ換水を行うと、きれいな水槽を維持することができます。またコケの発生予防にはコケをよく食べてくれるヤマトヌマエビやオトシンクルスを同居させるのがおすすめ。ペンシルはこれらのコケ取り生物を攻撃することはほとんどないので同居は問題ありません。幅40㎝ほどの水槽なら各1匹ずつくらいの同居でも十分効果が見られます。

●飼育の際に気を付けるポイント
飼育の基本の他に気を付けたいポイントを挙げてみます。意外と見落としがちなこともあるので押さえておくと良いと思いますよ。
·ペンシルは意外とジャンプ力が強いので水槽にはしっかりと蓋をしましょう。
·ペンシルを掬う際は跳び出さないように注意。特にクリムゾンレッドペンシルはよく跳ねるので要注意です。
·ペンシルは好奇心旺盛。換水時に排水中のホースに寄って来ることがあるので吸い出さないように注意します。
·水槽内にセットした器具類の隙間に入ってしまうことがあるので注意しましょう。

複数飼育のテクニック

ペンシルは複数で飼育すると楽しい魚ですが、前述したようにオス同士はよく争います。そこで争うのを前提にした飼育のポイントを挙げてみます。参考にしてみてください。

●同種同士の複数飼育
オスを複数飼育していると、やがて優劣ができて闘争は少なくなります。それでも給餌後など興奮したときにはよく闘争するので、レイアウトを工夫して隠れ家を多く作ったり闘争が激しすぎるようなら他の熱帯魚を混泳させるのも一つの方法です。

●他の熱帯魚との混泳について
ペンシルとの混泳には以下に挙げたような同じ水質を好む小型で比較的温和な熱帯魚が適しています。
·小型のカラシン:ネオンテトラやレッドファントムなどの小型種
·小型のコイ:ラスボラやバルブなどの小型種
·メダカの仲間:ランプアイやプラティなどの動きの素早い小型種
·温和なナマズ:グラスキャットやコリドラス、オトシンクルス、小型プレコなど
·ドワーフシクリッド:アピストグラマやラミレジィ、ペルビカクロミスなどの小型種
·小型アナバンティッド:ベタや小型のグーラミィ類
·その他の小型種:バジスの仲間やクーリーローチなどの温和なドジョウの仲間など

ペンシルのオス同士の闘争が激しすぎて困る、他の個体が隠れて出てこないという場合は、小型のカラシンやコイなどを多めに混泳させると、攻撃の的が絞りづらくなるのか闘争が緩和されることがあります。ただし興奮したペンシルが攻撃的になり自分よりも弱い熱帯魚を突つくことがあるので、毎日よく観察することが大切。混泳がうまくいっていない場合は、早めに弱い個体を他の水槽に移すなどして対処することも大切です。

おわりに

連載第1回目は赤いペンシルの魅力や飼育について紹介してきましたが、どの種も個性的で飼育していて楽しい魚たちですよ。今回紹介したもの以外にもペンシルの仲間はたくさん知られています。ぜひ彼らの楽しい生態を水槽で観察してみてください。では、また!

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