協力/山崎浩二
はじめに
今回紹介するのはメダカの仲間、オリジアス・メコネンシス(以下メコネンシス)です。日本産のメダカと同じオリジアス属の仲間ですが、全長が若干2㎝ほどの超小型種。この愛すべき極小メダカの魅力や飼育に迫ってみましょう。
オリジアス属について
メコネンシスについて紹介する前にオリジアス属についてちょっと触れておきましょう。オリジアス属はダツ目メダカ科メダカ亜科の魚たちです。属名のOryziasは米やイネを意味する古代ギリシャ語Oryzaに由来し、この魚が水田やその周囲の水域でよく見られることからの命名だと思われます。ちなみに植物のイネ属もまた古代ギリシャ語が由来のOryzaとされていますね。
またグッピーやプラティなどは卵胎生メダカと呼ばれるようにメダカの名が付きますがこちらはカダヤシ目です。以前はオリジアスもカダヤシ目でしたが再分類によりダツ目となりました。つまりグッピーなどのメダカとオリジアス属のメダカとは、分類上では目レベルで異なる系統の魚たちなんです。そのことは英名でもよくわかり、オリジアス属の魚たちはRicefish(ライスフィッシュ)やMedakaと呼ばれるのに対しグッピーなどのカダヤシ目の魚はKillifish(キリーフィッシュ)として区別されています。
オリジアス属のメダカは南アジアから東アジア、東南アジアなどに広く分布し現在30種以上が記載されています。日本に分布するメダカ(キタノメダカ、ミナミメダカ)などもこの属に含まれます。熱帯魚として古くから流通する種としてはインドネシアのスラウェシ島産のセレベスメダカ(スラウェシ島は以前セレベス島と呼ばれていた)や、マレー半島南部~インドネシアに広く分布するジャワメダカなどが有名ですね。2000年頃にスラウェシ島のメダカが注目されると黒い体色のニグリマスやネブロサス、黄色いプロフンディコラやマルモラートゥス、マタネンシスなどの固有種が流通するようになりました。筆者も2000年の初頭に2回ほどスラウェシ島のポソ湖やマタノ湖、トゥーティー湖などで採集・取材を行いこれらのメダカを採集した経験がありますが、独特な環境に生息する美しいメダカたちに感動した記憶があります。
そしてさらにスラウェシ島や周辺地域での調査が進むと、2010年以降にはウォウォラエという全身がメタリックブルーに輝く美種が流通するようになりました。また、これら以外にもインドやタイなどから時折オリジアスの仲間が輸入されることもあり、この仲間に注目してみるとなかなか面白い存在であることに気付くはずです。
メコネンシスとタイ産の超小型オリジアス
さてメコネンシス(Oryzias mekongensis)ですが、本種は大きくなっても全長2㎝弱とオリジアス属の中でも特に小さな種です。尾ビレの上下端が朱赤に色付くのが特徴で、特にオスは興奮時など状態によって赤い色彩の内側が黒く発色するという何とも美しいメダカなんです。この超小型メダカが分布するのはインドシナ半島を流れる大河メコン川の流域。そう、メコン川が種名mekongensis(メコネンシス)の由来になっているんですね。ちょうどラオスとの国境線となっているメコン川に接しているタイ東北地方のノーンカーイ県からウボンラーチャターニー県に至るエリアと、その内陸部が分布域です。現在でも東北地方の各所で生息地が発見されており、詳細な分布域に関しては未だはっきりしていません。もしかしたら対岸のラオスからも生息地が見付かるかもしれませんし、分布域に関してはとても興味深いものがあります。
実はタイにはメコネンシスと同じくらい小さなオリジアスが分布しています。ミヌティルス(Oryzias minutillus)とソンクラメンシス(Oryzias songkhramensis)です。前者は英名でDwarf medaka(ドワーフメダカ)と呼ばれるように全長が2㎝に満たない小さな種で主にタイの東部から中部~南部まで広く分布し、系統的にはジャワメダカのグループに含まれます(Sakaizumi, 2020)。一方後者は2010年に新種記載された比較的新しい種でこちらも全長2㎝ほどの超小型種です。メコン川の支流でタイ東北地方の北部を流れるソンクラム川(Songkhram River)が種名の由来で、この川の流域となるノーンカーイ県などの各県やラオス側にも分布が見られます。こちらは系統的にはメコネンシスに近く日本産のメダカが含まれるミナミメダカグループに含まれます。ただし、分布域に関してはいずれの種もこの限りではなく、筆者はカンボジア南部でミヌティルスを採集しており、タイ東北地方のマハサラカム県などからも生息が確認されています。またラオス南部のサワンナケート県でソンクラメンシスを採集した経験があり、実際の分布域はまだまだ未知だと言えますね。ここで同定の判断となる各種の特徴や分布域などを表にまとめたので参照してみて下さい。
表にも示したようにミヌティルスとソンクラメンシスの差を知っておけばメコネンシスとの区別も容易になります。ミヌティルスは総排泄孔付近に黒斑が見られますが他種には見られず、胸ビレの付け根に黒斑が入りません。胸ビレの付けに黒斑が入るのはメコネンシスとソンクラメンシスですが、ソンクラメンシスの尾ビレには赤い色彩が入りません。メコネンシスは輸入直後やおびえている時は本来の色彩が出づらいですが、よく見れば赤い色彩が確認できるので判別はしやすいはずです。また、本来の体色が出ていない状態でも黒い斑紋は出現するので、これらの特徴を把握しておけば同定の材料にできるはずです。
生態と雌雄差
メコネンシスは日本産のメダカのように水面直下を泳ぎながら餌を探す様子が観察できます。臆病な性質で水槽内でも普段は群れでいることが多いですが、繁殖時や給餌の際には興奮して強いオスが攻撃的になり他の個体を追い払う様子も見られます。
頭部は平たく口は上向きに付いているため水面に浮かんだ餌を食べるのに有効。目は大きくて視力がよく飼育者の姿にもすぐに反応します。
メコネンシスはミヌティルスやソンクラメンシスなどに比べると色彩的な性差が顕著です。オスは尾ビレの上下端の発色がメスよりも強く鮮やかで、状態によってその内側が黒くなる個体も多く見られます。また一部背ビレが赤みを帯びる個体もいます。また、オスはメスよりも背ビレやしりビレが発達し、成熟するとヒレの条が伸びてクシ状になることが多いですね。
対してメスは尾ビレの発色はオスほどではありませんが、尾ビレの付け根が赤くなるのはメスの特徴と言えます。背ビレが赤みを帯びる個体も多いですね。また背ビレやしりビレの条は伸びずクシ状にならないためオスとの区別は容易です。成熟したメスはお腹がふっくらしてくるので、一見してすぐにメスだとわかるくらいです。ただし幼魚や亜成魚では性差がはっきりしないことが多いので、もし販売されている個体が亜成魚で、そこから雌雄を得たい場合は多めに購入したほうがいいでしょう。
オスの発色は観賞価値高し
オスの体色は闘争時や餌やり時など興奮したときに美しくなることが多いですね。おそらく繁殖時にも美しくなっていると思うのですがメスの産卵が早朝のため飼育者が寝ていることが多く、なかなか観賞のタイミングが合わないのが残念。早起きしたときなど機会があったら確認してみてください。オスは興奮すると尾ビレの上下端の朱赤の色彩が濃くなり、さらにその内側が黒くなってとても見応えがあります。さらに闘争時などは背ビレやしりビレが黒っぽくなり、光の角度によってはグレーに見えることも。この時のオスはカッコいいですよ!
成熟したオス同士は時に激しく争います。頻繁にヒレを広げてフィンスプレッディング(体側誇示)を行い、お互いにぶつかり合うような行動も見られます。力が拮抗しているオス同士ではこちらが心配するくらい激しい戦いとなることもありますが、相手を殺すことはまずありません。決着が付くと負けたオスは体色が薄くなり大人しくなることが多いですね。勝ったオスは発色がよくなり、他の個体を執拗に追いかけまわすこともあります。フィンスプレッディング時はまるで小さな蝶が舞っているようで見ていて飽きません。
地域差が面白い!
オスは成熟すると尾ビレの上下端が朱赤に染まりますが、状態のよい個体や強い個体は赤い部分の内側が黒くなりさらに美しくなるんです。この色彩パターンは地域個体群によって差があることが知られています。近年発見された個体群ではウドーンターニー県の湿地で採集された個体群が美しいと話題になりました。これは筆者も採集したのですが朱赤の色彩がはっきりしていてとても美しい個体群だと思います。複数のオスを確認すると尾ビレの上下端が黄色くなる個体もいるなど個体差も確認できました。
さらに昨年生息地が発見されたブンカーン県サング(sang)の個体群は、朱赤の発色もさることながら内側の黒が他の個体群に比べて濃く発色しコントラストがはっきりしています。冒頭に掲載した写真の個体がそれですが、愛好家の間ではかなり評価が高くとても美しい個体群であると言えます。
このようにメコネンシスは生息地によって色彩が異なることがあるので、地域個体群ごとにコレクションするのも面白いと思います。若干2㎝ほどの超小型種ですから複数の小型水槽で各地域の個体群を飼育して、色彩表現の差を比較してみるのも楽しいと思いますよ。
メコネンシスの生息地
メコネンシスはタイ東北地方の湿地や湖沼、河川のワンドなど強い水流のない止水域などで多く見られます。生息地の水は清浄で、泥濁りしている場所や汚泥が溜まっているような場所にはいません。生息地では水面付近を数十匹の群れで移動しながら餌を探している様子が確認できます。日中水面直下の水温は30℃以上になりますが、特に問題なく生活していますね。生息地では他にタイ東北地方の定番種であるラスボラ・スピロセリカやボララス・ミクロス、スリーストライプ・クローキンググーラミィなども見られることが多く、場所によってはベタ・スマラグディナが生息していることもありますよ。大きな湿地であるとナンダス・ネブローサスやプラ―チョンなどのスネークヘッド、クラリアスなどのナマズ、マレーゴビー、ナイフフィッシュなどなど捕食者がたくさんいるので、小さなメコネンシスにとっては脅威だと思います。捕食者から隠れるように水面下に繁る水草の間を縫うように泳いでいますね。
2016年に訪れたウドーンターニー県の大きな湿地にはメコネンシスが生息していて、水面下を泳ぐ群れがたくさん見られました。ここは深いところでは水深が150㎝以上あります。深場は水温が低く安定しており、ボララス・ミクロスがたくさんいました。メコネンシスとミクロスが一緒に見られるような場所は水質が安定している湿地であることが多いですね。生息地の水質を計測したので参照してみてください。TDS(総溶解固形分)の値がだいぶ低い値を示したのが興味深く、農道を挟んだ別の湿地ではpH6.3、TDS268ppmという数値を示しメコネンシスやボララス・ミクロスがほとんど見られない代わりにベタ・スマラグディナやクローキンググーラミィが多く生息しているという環境でした。水質の微妙な変化で棲み分けていると思われるのが面白いところですね。
また隣接するブンカーン県のブンコンロン湖でもメコネンシスを採集しました。水中の動画も撮影しているのでぜひご覧ください。生息地のデータは以下の通りです。こちらもTDSが低いのが特徴です。同じ湖でも人の生活圏が近い場所ではTDSが高くなり、そのようなエリアではメコネンシスの姿は少ないようです。メコネンシスが多く見られるのは植物が多く繁っている場所で、水が清浄で身を隠せるという利点があるんですね。
生息地では魚のシッパー(輸出業)をしている友人のタイ人に密着取材し、採集の様子を見せてもらいました。メダカだからサッと掬えばいいじゃないか、と思われるでしょうが状態よく輸送するにはそれではダメなんですね。メコネンシスは網で採集して雑に扱うと擦れてダメ―ジを負って弱ったり、死んでしまったりすることがよくあるからです。採集時には細やかなケアが欠かせません。網でガサガサやるのではなく、大きめの網を固定してそっと群れを追い込みます。そして網を水から揚げずに大きなスプーンやレンゲなどで水ごと数匹ずつ掬っては袋に移すという地道な作業を繰り返すのです。このようにしてコツコツと集めたメコネンシスは、タイのシッパーのストック場で養生してから輸出されます。小さいからこそこのような大変な作業が必要なんですね。もちろん小型魚に限らず魚は輸入状態の良し悪しがその後の飼育にも大きく影響しますから、シッパーでの扱いはとても重用です。こんな裏事情を知ると、はるばるタイからやって来るメコネンシスにより愛着がわいてしまいます。
流通と入手
現在流通している個体はほとんどが現地で採集されたワイルド個体です。以前は金線ラスボラやラスボラ・ルブロドーサリス、さらにラスボラ・スピロセリカやボララス・ミクロスなどの超小型のコイなどに混じって輸入されることもありましたが、それでも稀。ところが最近では採集地の名称が明確な、いわゆるロカリティ付きの個体が流通するようになりました。愛好家にとってはロカリティがはっきりした個体を入手できるのは、この趣味を楽しむうえでなんと素晴らしいことかと感じますね。先にも書きましたが複数のロカリティ付きの個体を入手できたら、ロカリティごとに分けて飼育することをおすすめします。ただし現状ではメコネンシスは大量に流通する魚ではないため、レアな小型魚に強いショップや販売歴のあるショップの入荷情報をこまめにチェックするなどして常にアンテナを張っておくことが大切です。
飼育のポイント
状態のよい個体を入手することができれば飼育に難しいところはありませんが、美しい姿を楽しみ繁殖も狙うならいくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
◆メコネンシスの飼育例
ここでは幅23㎝の小型水槽を使用し10匹のメコネンシスを飼育しています。弱酸性の水質を好むメコネンシスのために底床にはソイル系の底砂を使用しました。温和なメコネンシスですがオス同士はよく争い、メスを追いかけ回すこともしばしばです。そのため追われた個体が逃げられるように水草を多めに使用。ベトナムスプライトの葉が水面付近に展開するように配置しました。スプライトの葉や根はメコネンシスの産卵床になるのもポイントですね。
■水槽データ
水槽:幅230×奥行き150×高さ250mm/約7.3L
フィルター:水作ボトムフィルター ミニ/エアポンプは水心SSPP-7Sを使用
ろ材:底床と同じ
底床:ソイル系
照明:ライトアップ 150 ホワイト(タイマーを使って1日約6時間点灯)
タイマー:LEDスマートタイマー
水温:23~26℃/エアコンで管理(水温計は貼るテンプ Mを使用)
水質:pH6.2、TDS73
餌:朝と昼にメダカ用顆粒フードやフレークフード、夕方にふ化したブラインシュリンプ幼生
飼育生物:オリジアス・メコネンシス(10匹)
水草:ベトナムスプライト、ミクロソルム“トライデント”、ウィローモス
※水槽はグラスガーデンN230を使用
●飼育数と水槽
5匹以上できれば10匹単位での飼育がおすすめ。自生地と同じように集団で生活させてあげるのがいいですね。まとまった数で飼育するとよく水槽前面にも出てくるようになり、繁殖も狙いやすく本種の魅力がよく味わえると思います。少数の飼育だと隠れてなかなか出てこなかったり弱い個体が集中的に追われてストレスになったりすることもあります。幅20㎝クラスのキューブ水槽なら水草をたっぷり配置することで10匹ほどは問題なく飼育できます。数多く飼育する場合や他の魚と混泳させるなら飼育数にしたがって水槽を大きくします。大きめの水槽を使用して生息地のように多数を泳がせるのもありですね。
●水槽の置き場所
メコネンシスなどの超小型メダカはかなり臆病で人が水槽の前に立つ度に驚いて逃げる様子が見られます。できるだけストレスを与えないことが大切で、ドア付近など部屋の動線付近に水槽を置くのは避けて静かな場所で飼育するのがベターです。
●水質と飼育スタイル
生息地の水質はだいたいpH6前後の弱酸性の軟水です。実際の飼育ではpH5~6.5くらいを維持すると飼いやすいですが、水が清浄であれば中性付近でも飼育は可能です。生息地の水質データではTDSが低い数値を示していましたが、極端に高い数値でなければ飼育に支障はなく水道水のpHを調整すれば飼育できるはずです。ただし、アルカリ性の水質は好まないのでpHを上昇させるような底砂やろ材、アクセサリなどの使用は避けましょう。てっとり早いのはソイル系の底砂を使用することで長期的に弱酸性の安定した水質を維持することができます。また超小型種のため給餌量やフンの量も少なく、水質を好適に維持できるのであれば底砂を使用しないベアタンクでも飼育可能です。いずれにしても古い水よりは新しめの水のほうが状態よく飼育できるので、水槽内の汚れが目立たないようでも時々は換水して水質を維持するといいでしょう。
●フィルター(ろ過)
メコネンシスは強い水流は好まないので、その点に留意すればどんなフィルターでも使用できます。今回の飼育例では底面式フィルター(水作ボトムフィルター ミニ)を使用しています。ソイルを底床材にすることでろ材の役割と水質を弱酸性に維持することができるので一石二鳥のろ過システムです。ポイントは出水口を水面よりも高い位置にセットすること。こうすることで強い水流が発生するのを抑えることができ、かつ水中に新鮮な空気を送り込めメコネンシスが好む環境を維持することができます。
●ろ材
水質をアルカリ性にするろ材の使用は避け、弱酸性にするものや水質に影響を与えないものを使用しましょう。
●底砂
ソイル系の底砂が使いやすく水質を好適に維持しやすいのでおすすめです。もちろん水質に影響を与えない砂利系の底砂も問題なく使用できます。
●水温
25℃前後を維持すると飼育しやすいですね。23~30℃であれば特に問題はありませんが、水温の急変は病気につながることがあるので注意します。
●照明
水草の育成やメコネンシスの観察のために必要です。メコネンシスは光のあたる角度によって目の周りや腹部が輝きます。水槽のライトを消灯して室内の照明で観察してみると、意外にもキラキラと輝いてまた違った表情を楽しむこともできますよ。なお今回の飼育例ではLEDスマートタイマーを使用して1日6時間ほど照射しています。
●餌
メダカ用の飼料や小型魚用の人工飼料が使いやすくおすすめです。特に最近のメダカ用飼料は良質のものが多数ラインアップされており、こまめに与えることでよく太り繁殖にも有効ですよ。メダカ用のベビーフードも粒が小さく食べやすいようでよく食べてくれます。フレークフードも水を汚しにくいのでよい餌です。ただしサイズが大きいと食べ残すことがあるので、指で揉んでかなり細かくしてから与えるといいですね。また、ふ化したブラインシュリンプ幼生も大好きでよく食べます。繁殖を狙う場合にもおすすめで私は毎日1回与えています。給餌は1日2回、できれば3回与えられると産卵にも効果的です。給餌量は食べきる量を十分に。ちなみにメコネンシスは水槽内に発生したコケやウォータースプライトなど水草の柔らかい根などを食べることもあります。
●水槽内のレイアウト
生息地でも水辺の植物や水草が豊富な場所を好むため、水草を多めに入れるといいでしょう。オス同士が争ったり追われたメスが逃げたりする際にも水草があると、弱い個体がすぐに隠れることができるので好都合です。水草はミクロソルムなどの丈夫なものがおすすめですが、好みの種でレイアウトするのもいいですね。今回の飼育例ではベトナムスプライトを底床に植えずに水面付近に葉が繁るように配置していますが、水面付近を水草で覆うようにレイアウトするとメコネンシスが落ち着きやすくなります。生息地のようにサルビニアなどの浮草を浮かべるのもいいと思いますよ。
●他魚との混泳
メコネンシスは他の超小型種や温和な魚との混泳も楽しめます。相性がいいのはボララスやディープレッドホタルテトラなどの温和な超小型種です。メコネンシスを攻撃したり食べたりしない魚であれば基本的に混泳はできます。ただし、他種との混泳水槽ではメコネンシスが産み付けた卵が食べられてしまうことが多いため、繁殖を狙うならメコネンシスだけで飼育するのがベターです。コケ取り役に入れることが多いオトシンクルスやエビなども卵を食べてしまうので要注意です。
混泳に向く魚
・メダカの仲間:小型種との混泳は可能だが生活圏が重なるのでストレスになることも。様子を見て。
・小型のカラシン:ディープレッドホタルテトラなどの温和な超小型種
・小型のコイ:ボララスやラスボラなどの超小型種
・アナバンティッド:リコリスグーラミィやピグミーグーラミィなどの小型種なら可能
・温和なナマズ:オトシンクルスやコリドラスなどの他魚を食べない小型種
・ドジョウ:クーリーローチなどの温和な種
・エビなどの小型甲殻類:ヤマトヌマエビやミナミヌマエビなどの小型種
●日常の管理
先にも書いたように古い水よりは新しめの水のほうが調子よく管理できるので、1~2週間に一度ほど全水量の1/4~1/2ほどの換水を行うといいでしょう。この際にメンテナンスグッズを使ってガラス面のコケを除去したり、底床を掃除したりすると好環境が維持できます。水草がいきいきと育てばメコネンシスにとっても好環境と言えます。
●病気について
状態のよい個体を入手できればまず病気は出ないですが、購入後の大きな環境変化や長期間メンテをせずに水が古くなったり、ろ過機能が低下して水が汚れ環境が悪化したりするとコショウ病やカラムナリス病などが出やすくなります。また秋口など水温が急激に下がると白点病が出ることもあるので注意しましょう。魚体が小さいため病気にかかると短時間で悪化し死ぬことも多いので、まずは環境を良好に保って病気を出さないこと。もし病気が出たらできるだけ早く病状に適した魚病薬を使って薬浴します。
また病気ではないですが意外にジャンプ力があるので、跳び出し事故を防ぐためガラス蓋をしっかりと置いたり、水位を下げて飼育したりするのも有効です。メコネンシスを掬う際に跳ねることもあるのでこれも要注意ですね。
●繁殖について
成熟した雌雄が揃えば産卵までは難しくありません。状態よく飼育しているとメスがお腹に卵を付けながら泳いでいる光景を見ることができますよ。ただし混泳水槽では卵や稚魚が食べられてしまうことが多いため繁殖を狙うなら準備も必要です。繁殖については次回以降に詳細を解説したいと思いますのでぜひ参照してください。
おわりに
日本のメダカと近縁でありながら成魚で2㎝ほどの超小型種メコネンシス。地域によって色彩に差が見られるなどコレクション性もあり、マニアックなアプローチもできる魅力的なメダカです。
小型水槽で十分飼育できるので入手機会があればぜひ、その愛らしい姿を楽しんでみてください。
では、また!