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山崎浩二のSmall Beauty World

第59回「スチールブル-・インベリス」

体側にベッタリと乗ったスチールブルーが美しいインベリスのオス個体。まだ若いながらも闘争性も強い。尻ビレと尾ビレの他に、背びれにも赤い色彩が強く現れているのが特徴で、この魚をより派手に印象付けている。

2018年11月、例によってバンコクのサンデーマーケットのベタ屋を巡回しながら魚をチェックしていた。
ここのところ、改良品種はニモ関係ばかりで面白くない。
かと言って、ワイルドベタ関係は、そうそうニューフェイスの登場はない。
いつも一番にチェックするベタ屋が密集する通称ベタ通りでは、めぼしい魚は見つからなかった。
こう言う場合は、あちこちに点在するマイナーなベタ屋を覗いてみることにしている。
今回は、以前ギターのカッパーを見つけたマイナーなベタ屋に行ってみた。
このベタ屋は照明を使っておらず、なおかつマジックリーフを使用しているため水が茶色く色付いている。
そのため、良く目を凝らして見ないと、魚が見えない。
そのためか素通りしてしまう人が多く、いつもお客は多くない。
ただし、水槽に入っている魚は一級品だし、価格もベタ通り程高くもなくて、自分にとっては穴場なのである。

前の写真とは別なスチールブルー・インベリスのオス個体。まだかなり小ぶりなオスだが、闘争性は十分である。奥の個体は通常のインベリスなので、その体色の違いを見て頂きたい。背ビレの赤の面積はやや少ないようだ。
スチールブルー・インベリスのメス個体。メスも闘争性が強いようで、同じメス相手にフレアリングしている。エラ蓋から各鱗にかけてメスながらもスチールブルーが現れている。

薄暗い水槽を覗くと、何やら見慣れない体色の魚がいるではないか!
メガネを外し、水槽に近づいて覗くと、やはり見た事のない魚である。 ただし、尻ビレや尾ビレの赤い色彩からインベリスであるのは間違いない。
しかし、体色がシルバーというかスチールブルーなのである。 この体色は、ここ数年タイで人気のハイブリッドのトリプルクロスのスチールブルーに似ている。
つたないタイ語で、この魚の事を尋ねると、ハイブリッドではなく純粋なインベリスらしい。
タイ南部産のインベリスを繁殖させている中から出た色彩変異を、三代かけて固定したそうである。

インベリス特有の尻ビレと尾ビレの赤だけでなく、背びれにも強く赤が乗り、エラ蓋から肩にかけてべったりとスチールブルーが乗った見事な個体。改良品種でありながら、ワイルドの精悍さも失っていない。

このスチールブルーのインベリスは、まだ若くてサイズ的には小さいが、闘争性は強いらしく、水槽の仕切りを外すと隣同士で激しくフレアリングしている。
そんな姿を見せられたら、ベタ・フォトグラファーとしては、見逃すわけにはいかない。メスもいるのか尋ねると、メスも販売しているそうである。
頭の中を過ぎったのは、以前、この店で購入しようとしたギターのカッパーのメスの事である。
想像していた値段と一桁違う程、高価だったためである。

恐る恐るこのスチールブルー・インベリスの値段を尋ねると、拍子抜けするほど手頃な値段が返って来た。その値段なら迷わず2ペアを購入である。
やはりベタは同じ品種で闘争するシーンを撮影したい。
入手した翌日には、今回紹介している美しい姿で撮影ができた。

産地は不明ながら、累代飼育により全身がメタリックなブルーグリーンに覆われた美しいメタル・インベリス。オス同士が闘争していると、このギラギラした体色が印象的である。さらに改良が進めば、体側全体がメタリックブルーに覆われるのであろう。
同じくメタル・インベリスだが、エラ蓋から肩にかけてのメタリックブルーの乗りは申し分ないが、体側部分ではややブルーが欠けた部分が残っているのが残念である。この個体では、背びれのブラックスポットがほとんど消失している。この特徴は赤い背ビレと同じく、固定できたら面白いかもしれない。

今回のコラムではおまけをひとつ。
最近、タイのベタ屋では、産地が不明なブリード個体のインベリスが売られている事もある。 いつもは産地不明という事で、このような魚は気にしていなかった。 だが、今回あるショップで見かけたインベリスはいやに体色がギラギラしていたため、目に止まった。 スプレンデンスとのハイブリッドではないかと尋ねたが、純粋なインベリスだと言う。 確かにサイズや体型を見る限りでは、ハイブリッドではなさそうだ。
スマラグディナでもそうだが、ブリード個体はワイルド個体よりもヒレの大きさも体色も美しくなる傾向がある。 このインベリスもそれと同様のケースであろう。
体色の美しい個体を累代した結果、メタル・インベリスと名付けたい程体色のメタリック感が強い魚が出来てしまったのである。 今回は、メインのシチールブルー・インベリスと共にこのメタル・インベリスも紹介しておこう。 あまり改良品種のなかったインベリスだが、今後どのような方向の改良品種が登場するのか楽しみである。

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