2018年11月、例によってバンコクのサンデーマーケットのベタ屋を巡回しながら魚をチェックしていた。
ここのところ、改良品種はニモ関係ばかりで面白くない。
かと言って、ワイルドベタ関係は、そうそうニューフェイスの登場はない。
いつも一番にチェックするベタ屋が密集する通称ベタ通りでは、めぼしい魚は見つからなかった。
こう言う場合は、あちこちに点在するマイナーなベタ屋を覗いてみることにしている。
今回は、以前ギターのカッパーを見つけたマイナーなベタ屋に行ってみた。
このベタ屋は照明を使っておらず、なおかつマジックリーフを使用しているため水が茶色く色付いている。
そのため、良く目を凝らして見ないと、魚が見えない。
そのためか素通りしてしまう人が多く、いつもお客は多くない。
ただし、水槽に入っている魚は一級品だし、価格もベタ通り程高くもなくて、自分にとっては穴場なのである。
薄暗い水槽を覗くと、何やら見慣れない体色の魚がいるではないか!
メガネを外し、水槽に近づいて覗くと、やはり見た事のない魚である。 ただし、尻ビレや尾ビレの赤い色彩からインベリスであるのは間違いない。
しかし、体色がシルバーというかスチールブルーなのである。 この体色は、ここ数年タイで人気のハイブリッドのトリプルクロスのスチールブルーに似ている。
つたないタイ語で、この魚の事を尋ねると、ハイブリッドではなく純粋なインベリスらしい。
タイ南部産のインベリスを繁殖させている中から出た色彩変異を、三代かけて固定したそうである。
このスチールブルーのインベリスは、まだ若くてサイズ的には小さいが、闘争性は強いらしく、水槽の仕切りを外すと隣同士で激しくフレアリングしている。
そんな姿を見せられたら、ベタ・フォトグラファーとしては、見逃すわけにはいかない。メスもいるのか尋ねると、メスも販売しているそうである。
頭の中を過ぎったのは、以前、この店で購入しようとしたギターのカッパーのメスの事である。
想像していた値段と一桁違う程、高価だったためである。
恐る恐るこのスチールブルー・インベリスの値段を尋ねると、拍子抜けするほど手頃な値段が返って来た。その値段なら迷わず2ペアを購入である。
やはりベタは同じ品種で闘争するシーンを撮影したい。
入手した翌日には、今回紹介している美しい姿で撮影ができた。
今回のコラムではおまけをひとつ。
最近、タイのベタ屋では、産地が不明なブリード個体のインベリスが売られている事もある。 いつもは産地不明という事で、このような魚は気にしていなかった。 だが、今回あるショップで見かけたインベリスはいやに体色がギラギラしていたため、目に止まった。 スプレンデンスとのハイブリッドではないかと尋ねたが、純粋なインベリスだと言う。 確かにサイズや体型を見る限りでは、ハイブリッドではなさそうだ。
スマラグディナでもそうだが、ブリード個体はワイルド個体よりもヒレの大きさも体色も美しくなる傾向がある。 このインベリスもそれと同様のケースであろう。
体色の美しい個体を累代した結果、メタル・インベリスと名付けたい程体色のメタリック感が強い魚が出来てしまったのである。 今回は、メインのシチールブルー・インベリスと共にこのメタル・インベリスも紹介しておこう。 あまり改良品種のなかったインベリスだが、今後どのような方向の改良品種が登場するのか楽しみである。