コロナによる渡航制限などのため、自分としては30年近く毎年訪問していたタイへの渡航が途絶えてしまい、2021年のタイのベタの情報をお届けする事が出来なかった。
そのため最後にタイを訪れていた2020年の9月までに撮り貯めていたベタの写真をこのコラムでも紹介させて頂いていた次第である。
この原稿を執筆している2022年5月の段階で、タイ政府はコロナによる観光客への規制を大幅に緩和した。
観光立国であるタイは、完全に経済優先に舵を切ったようである。と言うことで、やっとタイへ取材へ行ける運びとなった。
渡航のためのタイランドパスの申請も承認されたので、5月中旬には1年7ヶ月ぶりにタイへ渡航する予定である。
これだけ長く渡航しなかった事は今までないので、どれだけタイのベタや観賞魚の市場が変化しているか楽しみである。
次回のこのコラムでは2022年のタイのベタの最新情報をお届けできるはずである。その前に2020年までのタイのベタ紹介の最後の記事を読んで頂きたい。
今回紹介するのは、タイでブルー&ブラックと呼ばれるプラカットである。
一目見ただけで惹かれるものがあったために、すぐに品種名を尋ねたのだが、あまりにそのまんまの名前だったので、拍子抜けしてしまった。
この品種はプラカットだけではなく、同時にハーフムーンも作出されていたようで、両方とも販売されていたが、タイではプラカットの方がハーフムーンよりも人気が高いため、圧倒的にプラカットの方が数多くショップに並んでいた。
派手な色彩ではないのだが、黒と言うのは何故か魚好きを惹きつける魅力を持っているようである。
ベタだけでなく、数多くの観賞魚も改良品種でブラックが作られている事から、その人気の高さは容易に想像出来るだろう。ベタでもかなり初期の段階でソリッドのブラックが作られて人気を博していた。さらにそこにドラゴン系統の血筋を入れたブラック・ドラゴンなどへと進化を遂げて、ベタの改良品種の中ではブラックは確固たる地位を築いていったのである。
ソリッドのブラックの頭部付近に金属光沢のある個体は、サムライと称され高価で取引されている。
このようにブラックを基調としたところに他の色彩をうまく組み合わせると非常に魅力的な魚となる。
今回紹介するブルー&ブラックを市場で見かけるようになる前に、一時期そのプロトタイプと思われる魚が安価で出回った事がある。
今思うとブルー&ブラックを生産する過程で出来た選別漏れの個体だったかもしれない。
その魚はブルー&ブラックではなく、シルバー&ブラックと言う雰囲気の魚であった。
かなり品質にはバラツキがあったが、それはそれで魅力的であり、色彩違いを撮影して記録にはしてある。
ブルー&ブラックも品種としてのまとまりはあるものの、かなり表現型にはバラエティに富んでいる。そこは今回紹介する写真を見ていただければ、容易に理解して頂けるだろう。
このバラツキを面白いと感じるか、固定度が低いと感じるかは、人それぞれであろう。
ブラック寄りとブルー寄りの個体がいるが、どちらも魅力的であり、それぞれ出現率を高めるように固定していったら面白そうである。
このような新品種の場合、最初にリリースされるのはオスのみの場合が多いのであるが、間違いない本品種のメスも合わせて販売されているのは嬉しかった。
たぶんこの品種もあれから進化を遂げ、固定率が高まっていたり、また違う表現型が現れたりしている事だろう。
機会があれば2022年のブルー&ブラックも紹介出来たら面白いだろう。