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山崎浩二のSmall Beauty World

第91回 エイリアン・ゴールド“2023”

2023年3月 公開

オス同士で闘争するエイリアン・ゴールド。この個体は特にエイリアン特有の尾ビレのスポット模様が顕著に残っている。尻ビレにも薄っすらとスポット模様が残っており、誰が見ても間違いなくエイリアンと呼べるであろう。

本コラムでは、エイリアン・ゴールドは第69回と第77回の2回紹介してきた。
新品種の紹介としては当時納得して執筆したのだが、自分の頭の中ではどこか本当にエイリアンと呼んでいいのかと言う疑問が払拭出来ないでいた。
2022年の12月、タイでの取材をほぼ終えて帰国の前にチャトチャックの懇意にしているベタ屋に顔を出したら、これは2023年1月からリリースする予定だと言うエイリアン・ゴールドのプロトタイプのオスを1匹プレゼントして頂いた。
こいつに渡しておけば綺麗に撮影して貰えるし、良いプロモーションになるだろうと言う目論見もあるのだろうが、信頼関係が築けた証でもあるので有難く頂戴した。
その個体は数年前に同じ店で見たエイリアン・ゴールドとかなり似たような表現型の個体であった。

2022年の年末にプロトタイプとして、撮影用に分けて頂いたエイリアン・ゴールドのオス個体。頭部やヒレはブルーに染まり、各ヒレにも赤い色彩が残っている。エイリアン特有の尾ビレのスポット模様は入っていないが、選別淘汰していけば、この色彩でスポットの入る個体も作出できるはずである。
頭部や各ヒレ、鱗などがグリーンに染まる個体。体側前半の鱗には僅かに黒い色素も確認できる。尾ビレにいくつかの黒い暗色斑が残っているのが気になるが、こうしたシミは消す方向で改良は進むであろう。

数年前にその店で初めて見たエイリアン・ゴールドは、突然変異で現れた1匹のオス個体のみであったし、値段もかなり高価だった。その上、尾ビレに欠損部分があり撮影のモデルには使えそうもないので見送った記憶がある。と言うようにエイリアン・ゴールドは自分にとって曰く付きの魚なのだが、3回目の正直ではないが、今回は自分自身も自信を持ってエイリアン・ゴールドとして紹介出来る魚であった。

頰や各ヒレ、鱗がブルーに染まったオス個体。このような青い顔が映画のアバターを連想させるので、グリーンに染まる個体と共にエイリアン・アバターの名称で販売されているようである。

2023年2月、大量のスギ花粉飛散のニュースを見て早々に日本を脱出してタイに避難した。
既に花粉症の症状に悩まされていたが、スギ花粉のないタイに来たら体調は嘘のように快適に!!すぐにチャトチャックに行き、エイリアン・ゴールドが既にペアでリリースされているのか確認してきた。
2022年の年末に聞いた言葉は嘘ではなく、ショップにはペアでエイリアン・ゴールドの姿があった。すでに購入して撮影する気満々だったのだが、今店頭にいる個体はモデルにするにはグレードが低いので、ヤメた方がいいと制止されてしまった。
店主の話しでは、尾ビレにエイリアン特有のスポット模様が入っている個体もいるので、それを来週持って来てくれるとの事。そう聞いたら、そちらを撮影した方がいいので、納得して退散した次第である。

頭部や各ヒレ、体側からブルーやグリーンの色彩が抜け、これぞゴールドと呼びたくなるような個体である。背ビレや尻ビレには薄っすらと模様が残っている。他の色彩の個体も同様だが、エイリアンの腹ビレは他のベタのように長く伸長しないのが特徴と言える。

翌週、楽しみに再訪し水槽を眺めると、確かに尾ビレやその他のヒレにもエイリアン特有のスポット模様が残った魚の姿が。
エイリアン特有のスリムな体型やあまり伸長しない腹ビレなど、これぞエイリアンと言う魚である。ショップに並んでいるオス個体を見ていると、表現型にはまだかなりばらつきがあるようで、少なくとも4タイプには分けられる。
その中で、頭部がブルーやグリーンに染まったタイプは、店主曰くエイリアン・アバターと呼んでいるらしい。
顔がブルーなのでアバターなのだろうが、かなり安易な命名である。
アバターと言う名称は、ベタではプラカットに数年前から使われているので、混同する可能性もあるので、個人的にはあまりお勧めするネーミングではない。
タイプ違いがあったら新新種の紹介には全タイプを紹介しなければいけない。

自分的にはもっともエイリアン・ゴールドの完成形に近いと思われるオス個体。尾ビレにははっきりとエイリアン特有のスポット模様が残っており、尻ビレにもわずかに痕跡がある。アバターと呼ぶブルーやグリーンの残った個体も美しいが、ゴールドと呼ぶにはこのような個体がしっくりとくる。

色彩の異なる4匹のオスを購入して、当然のようにメスも同タイプを付けて貰おうとお願いしたら、メスはほぼ全て同じようなゴールドの色彩なので、区別ができないそうである。
オリジナルのエイリアンも繁殖させると、同腹の子供からブルーやグリーンなどが出現するらしいので、このエイリアン・ゴールドも同じなのかもしれない。
このエイリアン・ゴールド、オリジナル程のガツンとした色彩ではないが、ワイルド好きのマニアにはギリギリ受け入れられそうな雰囲気である。
尾びれにシミ状の暗色斑が残っていたり、エイリアン特有のスポット模様も個体により様々であり、まだまだ洗練する必要がある品種と言える。
数年後に見違えるような姿に変化するようなポテンシャルを感じる魚でもある。ブリーダーは量産もしているそうなので、すぐに日本でもこのエイリアン・ゴールドは入手出来るようになるであろう。

エイリアン・ゴールドはオス個体ではいくつかの色彩タイプに分けられるが、メスではオス程の顕著な色彩の違いはないため判別は難しい。 体側の鱗には薄っすらと色彩が残っているので、状態によってはタイプの確認も可能かもしれない。

それにしてもマハチャイエンシス、スマラグディナ・ギター、スティクトスのハイブリッドから生まれた品種が、ここまで進化するとは誰も考えていなかったであろう。
タイではすっかりエイリアンはベタ市場にも馴染んで、ベタの1品種としての地位を確率している。
体型はもちろん各ヒレに入るスポット模様などにも個体によって違いが確認できるようになっているので、機会があったら再度このコラムで紹介したい。

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