このコラムで紹介するベタはワイルド系やプラカットが多い。これは筆者である私の趣味によりところも大きいが、現在のタイのベタ市場の動向によるものである。
新しい品種がリリースされたら出来るだけ早くそれを紹介したいのである。
品種によっては長く親しまれるポピュラー種になる事もあるが、あまり人気がなく直ぐに消えてしまう品種もある。
そうしたベタ改良の歴史の記録にでもなればと思い、日々撮影を続けている。
こうしたモデル選びには、ここでも何回も紹介しているバンコクのチャトチャック、通称サンデーマーケットやウィークエンドマーケットと呼ばれる場所に出向く事が多い。
店ごとに特徴のある品揃えをしたベタショップが数多くあり、ここを訪れれば一通りの魚は揃ってしまう。
長く通っているとお気に入りのショップも出来て、購入する店がマンネリ化してしまうという短所もある。と言う事でたまには新規開拓で、いつもは覗かない店をチェックする事も大切だ。
ある時、フラっと覗いた店の水槽にいるチャーンに目が止まった。
日本では人気の高いチャーンであるが、特徴である胸ビレが切れていたり左右のバランスが悪い個体が多く、撮影用のモデルとしては積極的に使わない品種であった。
その店にいたのは、キャンディのチャーンであった。
色彩も綺麗だったが、何より気に入ったのはその体型である。
特徴である大きな胸ビレは欠損もなく、左右のバランスも美しい。
そしてチャーンに有りがちな他のヒレのガタガタもなく、全てのヒレの縁も綺麗に整っている。
これはモデル個体として使えると思い、すぐに店主に値段を聞いてみた。
返って来た答えは想定内の価格であったが、2匹買えそうな個体がいたので、2匹買うのでちょっとサービスをお願いしたら、快く受け入れてくれた。
別に値引きがなくても購入するつもりであったが、最近はタイ語での値引き交渉も覚えたので、ダメ元で聞いてみる事も多い。
こうしたコミュニケーションがあると、顔も憶えて貰えて次回からの買い物に役立つ。
お気に入りのモデル魚をゲットして、部屋に戻り直ぐに撮影を行った。
ファインダー越しに細部も確認したが、チャーンとしては抜群に美しい魚であった。
かなり気に入ったので、翌週もう少し購入しようと同じ店に行ったのだが、残念ながらその際は売り切れていて1匹もいなかった。
そこで店主にスマホに転送した撮影した写真を見せ、この魚がもっと欲しいんだけどと伝えてみた。
写真を見た店主は、これは本当に自分の魚なのかと尋ねていたが、もちろん前の週にこの店で購入した個体がモデルだ。
この綺麗な魚が気に入ったのでもっと欲しいと伝えると、ファームにいるので来週持ってきてくれると言う。
実際に撮影した写真を見せると、タイのベタ屋のほとんどが自分の仕事を理解し、協力してくれるようになるのでありがたい事である。
翌週、その店を訪れると約束通りキャンディのチャーンを5匹用意してくれていた。
色彩的にはやや最初の個体に負けるが、どの個体も胸ビレや体型に関しては文句なしのクオリティであった。
と言う事で、今回のコラムで紹介している7個体はすべて同じブリーダーの個体である。
チャトチャックの他の店でもキャンディのチャーンを見かけるが、ほとんどの場合胸ビレに難がありモデル個体には使えないレベルである。
他の改良品種でもそうだが、同じ名前でも個体により質が異なり、それにより値段も違って来る。
名前や値段に惑わされず、自分の眼で良い個体を選べるように精進したいものだ。
本コラムでもあまり紹介する機会が少なかったチャーンであるが、水作さんに聞いたところでは、前回のチャーンの記事は人気があったようなので、また美しいニューフェイスでも登場したら紹介していく事にしよう。