水作株式会社

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山崎浩二のSmall Beauty World

第95回 スプレンデンス・オレンジ

2024年4月 公開

オス同士で闘争するスプレンデンス・オレンジ。見事に伸長したスペードテールが美しい。各ヒレに入った赤いメッシュ模様も非常に良いアクセントになっている。

このコラムでは今までに数多くのワイルド系の改良品種を紹介して来た。
その多くはチャトチャックのワイルド系に強いショップで見つけたものがほとんどである。それらのお店では、自分の好みが完全に理解されているので、ニューフェイスが入荷するとすぐに声を掛けて貰える。と言う状況なので、ワイルド系に関してはほぼ他のショップはノーマークであった。

ある日偶然今までに付き合いの無かったショップで気になる魚を見つけてしまった。ガラスのケースにビニール袋詰めで浮かべられたその魚は、尾ビレの中央が伸長したしたスペードテールなのは、ヒレを閉じた状態でも見るだけで明らかであった。そこでビニール袋に入った魚同士が見えるように袋を移動すると、すぐに闘争モードに突入してくれた。お互いにヒレを広げて体色の輝きも増すと、その美しさは想像以上であった。

やや暗めのボデイ体色のスプレンデンス・オレンジのオス個体。体色やヒレの色彩、ヒレの赤いメッシュ模様などには個体差が見られる。
明るめのオレンジ色の体色が目立つスプレンデンス・オレンジのオス個体。各ヒレのオレンジ色の面積も広く、全体的にオレンジ色の印象の強い個体である。

最初はオレンジ色のヒレの色彩だけが目立って気が付かなかったのだが、各ヒレには赤いメッシュが入っている。
体型から判断すると間違いなくベンジャロン系のスプレンデンスであるが、念の為店主にこの魚の名称と価格を尋ねた。店主の答えだと、この魚の名前はスプレンデンス・オレンジと言う事で、価格もやや高目ではあるが複数購入でも抵抗の無いものであった。ただし、オスのみでメスはいないそうだ。

ワイルド系のスプレンデンスにベンジャロンと呼ばれる系統が登場して以来、スプレンデンス系のワイルドは尾ビレの形態は見事なスペードテールになり、確実に鑑賞的な価値は高まったと言えるだろう。
ただし、販売される際にはベンジャロンの名前を付ける場合とスプレンデンスに色彩の名前だけを冠する場合とに分かれている。
このコラムではモデルの魚を購入した際の名前で紹介させて頂く事にしよう。

やや暗めのボデイに入るブルーのスポット、美しく伸長した各ヒレに入る赤いメッシュ模様が非常に目を引く美しい個体である。こうしたダーク系の個体とオレンジ系の個体は、好みが別れるところである。
スプレンデンス・オレンジとしては、まだ若く尾ビレの伸長具合も体色もいまいちな個体だが、成長につれての変化が期待出来る個体である。

このスプレンデンス・オレンジは、オスのみ10数匹がショップに並んでいた。その中から、尾ビレや各ヒレの伸長具合が美しく、各ヒレの赤いメッシュ模様のバランスが良い個体を選んで購入した。
いつもながらクソ暑い環境の中での個体選びは非常に体力を消耗する。特に屈んだり中腰にならなければ見れない場合は重労働である。
エアコンの効いた涼しいショップの中で椅子に座りながらセレクトできたらどんなに楽だろうかといつも考えてしまう。

背ビレや尾ビレに僅かに赤いメッシュ模様が確認出来るスプレンデンス・オレンジのメス個体。繁殖を目的とした場合、当てメスではなくこうした純系のメスを入手するのは必須である。

このスプレンデンス・オレンジ、体型も体色もかなりの美しさなので、ぜひメスも見てみたい。
ニューフェイスとして紹介する場合でも、オスのみでなくメスも紹介できれば情報としての価値も高まる。ただしこのような場合、日本人である自分が交渉しても、言語の限界もありかなり難易度が高い。こうした際には相棒のトンに交渉して貰うのが早道なのは経験済みである。

早速トンを呼んでメスが手に入らないか店主に聞いて貰う。
店主が言うには、この魚は友人がブリーディングしているので、メスを出して貰えるか聞いてくれるそうだ。
その結果、翌週に持って来て貰える事になったのだが、ここからが大変だった。翌週約束の時間に受け取りに行くと、まだ届いていないので少し待って欲しいと言われてしまった。
再度受け取りに行くと、届いたメスを繁々と眺め、これは販売出来ないと言われてしまった。
どうやら頼んだ魚とは別系統のメスが来てしまったようである。
そこからまたブリーダーに電話をかけたりすったもんだのやり取りがあった後、結局夕方ぐらいにトンに連絡を入れ、どこかで受け渡しと言う事になった。
結果的には間違いなく同系統のメスを無事に受け取る事が出来た。

体色やヒレの色彩、体型も美しいスプレンデンス・オレンジのメス個体。薄っすらと腹部に卵巣も透けて見えるので、こうした個体を入手出来れば、すぐに繁殖までチャレンジ出来るだろう。

騙して当てメスを売り付けるのではなく、ちゃんとしたメスを販売しようとする姿勢には好感が持てたが、かなりのドタバタだったため価格にその手間賃が乗せられていたのは、いかにもタイの商売人であった。

このように苦労して入手したスプレンデンス・オレンジの美しい姿を御覧頂きたい。

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