今回はタイトルにある本題に入る前に少し話しておきたい事がある。恒例の春のタイの滞在を終えて日本に帰国した直後、6月11日の朝、タイの相棒のトンから朝に電話がかかってきた。朝の4時ごろにチャトチャックのベタのお店が集まっている辺りで火事があり全焼してしまったとの連絡であった。幸い営業時間外の早朝であったため、人的被害は無かったようだが、ケースに入っていたベタ達は全部焼けてしまったそうである。
すぐにネットでニュースを確認すると、早朝のバンコク・チャトチャック魚市場で火災、100店舗が全焼と言うニュースが目に入った。人的被害がなかったのが不幸中の幸いであったが、あの辺りにはベタ屋だけでなく、鶏や観賞用の鳥、爬虫類なども販売されており、それらも被害に遭ってしまったようだ。
いくつかのベタ屋とはLINEで繋がっていたので連絡してみると、焼け焦げた悲惨な光景が送られて来た。このソイパカットと呼ばれるベタ屋が集まっている辺りはもう何十年も通い、自分にとって撮影のモデルを探す重要な場所でありネタ元であった。
そこがこの惨状と言うのは非常にショックであった。
火災の原因は店内が暑いので夜でも点けっぱなしにしていた扇風機などの電気器具からの漏電というのが公的な見解だ。別な見方をする人も多いようだが、証拠がないのであまり適当な話をするのも良くないだろう。
トンにその後の様子も聞いていたが、ベタ屋達は代わりの場所を見つけてそこで営業を再開したようであった。まあ、通常の熱帯魚屋の店舗と異なり、ベタ屋は棚とベタ用の小さなガラスケースさえあれば営業できるので、再会も比較的楽だっただろう。
このような状況の中、9月の半ばになりバンコクを訪れた。すぐにチャトチャックに行き、ベタ屋を確認した。
トンが自分が懇意にしていた店がどこで再開しているかを調べておいてくれたので、すぐに皆さんに挨拶に行く事が出来た。
散り散りばらばらになってしまっているが、ほぼソイパカットの知り合いの店は無事にお店を再開していたのが嬉しい。今までの店と勝手が違うし集客力も異なるだろうが、頑張って営業を続けて頂きたい。
さて、ここから本題である。今回、バンコクを訪れてすぐにベタの撮影を始めたのだが、今回ちょっと気になる事があった。
オッドアイと呼ばれる両眼の色彩が異なっている個体に遭遇する機会が多いようなのである。
オッドアイとは、人間で言う虹彩異色症で左右の瞳の色彩が異なる形質の事を言う。
有名なところでは、猫の瞳の色彩が左右で異なっているのを見た事がある人も多いだろう。
ベタの場合、片眼が黒眼、片眼が赤眼のオッドアイがほとんどである。
以前にもこのコラムで書いた事があるが、ベタの場合、レッドアイは視力が弱い場合が多い、完全に視力がない場合と若干だが見えている場合があるのは、行動を見ていれば判断出来る。
オッドアイの場合、片眼は黒眼で視力的には問題が無いので、片眼がレッドアイでもそれを補える為、体型的にも通常の個体と遜色が無い。なので両眼レッドアイの個体に比べると飼育も容易である。
今回は2週間の間に綺麗なオッドアイの個体を3個体も見つける事が出来た。単に偶然が重なったのか、自分がオッドアイを見つけるのに慣れたのか不明であるが、今までにない確率である。
オッドアイの個体は人により好き嫌いが分かれると思われるが、自分は数多くのベタの中からオッドアイや両眼レッドアイの綺麗な個体を探し出すのは宝探しの様で非常に楽しみである。
左右で違う魅力の魚を楽しめるので、鑑賞価値も2倍である。
今回はこの2年間で見つけた美しいオッドアイの個体を左右の画像で紹介するので、楽しんで頂きたい。
キャンディとしては典型的な色彩で体側に入るイエローが良いアクセントになっている。レッドアイは左側だがこちらの視力も良いようで、体型的にもかなり健康的に美しく育っている。ヒレの形も見事である。
ちょっとイレギュラーな模様をした個体で、ブルー、ホワイト、イエロー、ブラックのバランスが絶妙である。体型も非の打ちどころがなく、ヒレの広がり方も美しい。オッドアイじゃなくてもマニアには好まれそうな個体である。
白がちな体色にブラックとレッドの模様が入ったコイベタのオッドアイである。ややおとなし目の模様であり、もう少し派手に模様が入った方が万人受けするだろう。ただし白い体色には赤い眼がより映える。
キャンディの典型的なカラーのオッドアイである。オッドアイの個体はキャンディで見かける事が多いが、これは単にキャンディの生産数が多いためかと思われる。この個体では左側の眼がかなり鮮明に赤くなっている。
パステル調の淡い体色のオッドアイで、右側の眼が赤くなっている。レッドアイと一括りにしているが、鮮やかな赤い眼をした個体の他暗いワインレッドの眼をした個体、角度によって赤く見える個体など、同じオッドアイでも変化に富んでいる。
タイガーと呼ばれるコイベタのブルーの体色が濃い個体で、右目が鮮やかな赤に輝き、イエローの体色に良く映える。視力も良いようで、ガッチリとした体型がそれを証明している。
多色で飾られた美しいキャンディのオッドアイである。キャンディの出始めの頃はこのような個体は非常に高価で販売され、手が出なかった記憶があるが、今は量産されているため手頃に入手できる。ここまで体色が派手だとレッドアイが霞んでしまいあまり目立たない。