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山崎浩二のSmall Beauty World

第31回「コイベタのアルビノ」

オスのコイベタのアルビノ個体。この個体は片側だけアルビノのオッドアイである。反対側は正常な眼のために視力も問題ない。そのため、このようなフィンスプレッディングの様子を見せてくれる。

ご存知のように、昨年辺りからコイベタが日本では大人気になっている。そのため、タイに出掛けると言うと珍しい色彩やレアな個体を探すように頼まれる事が増えた。それ自体は、自分の仕事にとっては助かる面が多い。と言うのは、珍しい色彩やレアな個体はタイでも非常に高価なのだ。これを自腹で購入して撮影のモデルに使っていては、商売的には赤字になってしまう。儲けを乗せられなくても、そのまま購入した値段で知人達に譲れるなら、こちらの懐は痛まない。ただで貴重な個体を撮影できる訳である。レアな個体をタイのベタ屋を巡って探す事自体は全く苦にならないし、そのようにして見つけたレア個体を撮影するのも嫌いではない。ベタを頼んだ方も自分もウィン・ウィンなのだ。

赤い色彩が美しいオス個体だが、両目ブドウ眼のアルビノなため視力が弱く、オス同士でも闘争を行わない。しかし、薄ら他の魚の存在は見えている様な行動は行う。
黄色系のコイベタのアルビノ。オス個体だが、視力は弱くてオス同士でも闘争行動は見せてくれなかった。こうした個体でも口元に餌が来ると食べる事はできる。

頼まれるベタのリクエストとしては、アルビノというのが圧倒的に多い。様々な品種が作られているベタだが、まだアルビノだけは固定されていない。多くのベタを繁殖させると、その中からたまにアルビノの個体は出現する。30年程前から改良品種のベタを見ているが、昔からたまにブドウ眼のアルビノ個体は目にする機会はあった。それがなぜ品種として固定されるまでに至らないのだろうか?答えは視力と体質にある。ベタのアルビノは視力が良くないケースが非常に多い。そのためオスであっても闘争性がなく、2匹一緒にしてもヒレを広げてのフィンスプレッディングも行わない個体が多い。かろうじて目の前にきた餌は食べる事が出来るので、何とか成長した様な虚弱体質の魚が多いのだ。このようなアルビノ個体は、オスでも水面に泡巣を作る個体は非常に希である。泡巣を作らないのでは、繁殖は不可能である。ただし、希に視力も問題なく、泡巣も作る個体が見つかる事がある。この様な個体は貴重で、ぜひ繁殖に使いたい。

色彩的なバランスもよく美しいコイベタのアルビノ。オス個体なのだが、やはり視力は弱い。
両目ともブドウ眼のアルビノ個体。オス個体だが、若干視力は良いようで、他の個体に対して意識している様な行動を見せる。

ただのアルビノだけでも探すのは難しいのだが、更にコイベタのアルビノと言うリクエストだと、さぞ難しいだろうと考えていた。ところが、バンコクのサンデーマーケットで知人のベタ・ブリーダーにアルビノの個体を頼んだら、意外と簡単に見つかってしまい拍子抜けであった。これは頼んだ方のネットワークが広かった事もあるが、コイベタ自体が盛んに繁殖が行われていた事も理由であろう。アルビノのベタが出現する確立が高くなっていたのである。また、コイベタ自体がアルビノが出現し易い因子を持っているのかもしれない。

コイベタのメスのアルビノ個体。視力は弱いようだが、かなり見えるようで他魚も意識する。餌も食べる事ができ、腹部の卵巣も発達しているので繁殖に使えそうだ。

コイベタのアルビノは、みんなブドウ眼のアルビノである。リアルレッドアイのアルビノは見た事がない。両方の眼がアルビノもいれば、片眼だけがアルビノのオッドアイ・タイプも多い。このオッドアイ・タイプはオレンジ色のコイベタで目にする機会が多い。

すでに何ペアかのコイベタのアルビノを知人に託した。あるペアは繁殖に成功した様なのだが、残念ながらアルビノは出現しなかったようである。ベタのアルビノの遺伝子は、通常のアルビノとは異なっているようだ。コイベタではないが、ファンシーのマーブル・タイプの魚のアルビノをタイのプロブリーダーが繁殖を手がけているような話しは耳にした。しかし、そのブリーダーからもまだアルビノはリリースされていない。やはり一筋縄ではいかないのであろう。しかし、プロもアマチュアもベタのアルビノの作出には情熱を注いでいる。
近い将来、固定されたタイプとしてベタのアルビノを目にする時代が来るであろう。

黄色系のコイベタのメス個体。アルビノとしては視力も良い方で、餌食いも良い。体格も良く卵巣もしっかり発達しており、繁殖には問題なく使えそうである。
オレンジ色系のコイベタのアルビノ。この個体はオスで片側だけがブドウ眼のオッドアイである。

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