ここ2回ほどこのコラムでハイブリッドのワイルド系改良ベタを紹介して来た。
グッピーでも大きなヒレの改良品種よりもショートテール系の改良品種の方に興味がある。ベタでもハーフムーンよりもプラカットの方が好きである。このように元々、改良品種よりもワイルドに近い魚の方が好きなのだ。このワイルド系改良ベタは改良品種でありながら、ワイルド・ベタの魅力を失っていないため、一目で気に入ってしまった。
3月にスギ花粉の舞う日本から逃げ出してタイに来て、翌日に出会ったのが、前回紹介したトリプルクロス・タイプⅡである。ところが、その翌日、今度は馴染みのワイルド・ベタを扱っている店で全身がブルーに染まったスマラグディナに出会ってしまった。グリーンのイメージが強いスマラグディナなので、体型はそのままでブルーになるとかなり違和感を感じてしまう。ここのところ他の種類と交配したハイブリッド系の魚を見ていたため、すぐに尋ねたのは、この魚がハイブリッドなのか純系なのかであった。幸いな事にこのスマラグディナ・ブルーはここの店の主人が自分で作出した魚との事。推測ではなく、直接どのようにこの魚を作出したのかを聞くことができた。
まず答えを書くと、このスマラグディナ・ブルーはタイ東北部のウドン産のスマラグディナから作り出した純系の魚だそうだ。突然変異で現れたブルーの強い魚を元に選別交配を重ねて満足のいくブルーの魚に仕上げていったらしい。初期は満足のいくブルーではなかったり、固定率も低かったそうである。色彩的に満足いくものができ、固定率がほぼ100%になったために2017年になってお店に並べたそうである。実際にショップに並んでいる20匹程のオスを確認したが、ほぼみんな同じ体型・色彩であった。まあ、商品にする段階でかなり厳しく選別されているはずなので、当たり前と言えば当たり前なのであるが。
日本ではあまり紹介されていないようだが、この店主はブルーのスマラグディナの前に、カッパーのスマラグディナも作出している。こちらもやはりウドン産のスマラグディナから作出したそうである。5年程前から商品として並んでいるのを自分も認識していたが、以前はあまり改良系の魚に興味がなかったので、敢えて撮影はしていなかった。今回、ブルーのスマラグディナを紹介するに当たり、一緒に紹介したいと考え、初めて撮影をしてみた。色彩は異なるものの、性質その他はスマラグディナ同様で、やや臆病なところがあり、撮影にはやや時間を要した。
このカッパーのスマラグディナに関しては、数年前にドイツのホルスト・リンケ氏撮影の写真を見ていた。今回自分で撮影した個体を見て、リンケ氏撮影の個体と違う点をひとつ見つけてしまった。今回撮影した個体には、ウドン産のスマラグディナの尾ビレ基部の軟条の間に入る細いブラックスポットがないのである。スマラグディナ・ブルーにはどの個体にもこのスポットが存在している。自分の撮影したカッパーの魚にはなぜこのスポットがないのか、作出者に直接訪ねてみた。カッパーの魚に関しては、この尾びれのスポットがある個体とない個体がいるそうである。
たまたま店に残っていた2匹のオスのうち1匹には確かにスポットが存在していた。累代しているうちに、この特徴がない魚が増えてしまったのであろう。
このように、グリーンのスマラグディナから突然変異的に現れたカッパーやブルーの魚。以前このコラムでも紹介した自然下でも存在するブリラム産のグリーンの強いスマラグディナ。スマラグディナだけでも三色が存在するのは非常に興味深い。
さて、日本ではどの色彩のスマラグディナが一番人気が出るであろうか?