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山崎浩二のSmall Beauty World

第49回「コイベタ・クラウンテール」

白地をベースに、体に赤や黒のスポット模様を有するコイベタ・クラウンテールのオス個体。まだ体色のバランスも体型をいまいちであるが、ここまでの個体を作出した努力は評価したい。

2017年秋の訪タイの際に気になったベタは、前回このコラムで紹介したインベリスの改良品種の他にもうひとつある。それはコイベタのクラウンテールである。
もうコイベタが作出されてからかなり経つ。最初にハーフムーンやデルタテールのコイベタが作出された。それに次いで、ベールテールやダブルテールのコイベタも市場に出回るようになってきた。
ベタのマニアなら次に考えるのは、クラウンテールのコイベタであろう。

前の写真と同じ個体の反対側である。コイベタは左右で体色が異なる個体がほとんどである。コイベタとして見たら、こちら側の方が体色のバランスは良いだろう。

これに関しては、懇意にしているブリーダーが作出しようと交配を重ねているという話は聞いており、そのプロトタイプを見せてもらった事もある。
クラウンテールのフォルムに、コイベタの色彩を乗せるのはそう難しくないように思われるが、実際はかなり難しいようである。
簡単であれば、もうサンデーマーケットなどで普通に販売されるようになっているはずである。
と言う事で、ベタマニアの間では、コイベタのクラウンテールは待ち焦がれていた感もある。

ある時、例によってサンデーマーケット内のベタ屋を物色していると、そこの店主から明日の朝9時にコイベタのクラウンテールが20匹だけ入荷すると言う情報を得た。
もちろん撮影用に欲しいのだが、たった20匹しか入荷しない魚を、タイの熱いベタマニア達と取り合いするのはかなり抵抗がある。
お店で欲しいベタを見つけた際は、タイでも早い者勝ちがルールである。
欲しいベタを見つけた場合、早くそれを購入する意思を示したお客が入手する事ができる。

白地をベースとして、口先とヒレの赤みがアクセントとなっているコイベタ・クラウンテールのオス個体。体にも赤や黒のスポット模様が入れば、コイベタとしてはさらにハイレベルになったであろう。

しかし、今回のように初物の魚が入荷する場合は特別である。店主は買いそうなお客に、いつ入荷すると言う事前情報を伝えている。
そうなると、その時間に欲しいマニア達が入荷するベタ目当てにお店に集まっている。
そこで、良い個体を取り合うのだから、かなりな修羅場となる。
こうした場面では、目利きよりも強気な性格が勝ちである。
タイのマニア達には、自分の国の魚を外国人に取られてたまるかい!という愛国心のような感情もあるだろう。
自分を含め、日本人はお行儀が良すぎて、こうした争いには不向きである。
朝9時に入荷すると言う事は、8時にはスタンバイしていないと、争奪戦には参加できない。

赤をベースに、体側に薄い黒のスポット模様を有するコイベタ・クラウンテールのオス個体。もっと黒が濃ければコイベタとしてのレベルも高くなるのだが、今後に期待したい。

8時にサンデーマーケットに行くには、ホテルを7時には出ないといけない。そのためには6時起きだ。
これは朝が弱い自分にとっては、かなりの難関である。
争奪戦と時間の事をよく考えてみて、この時は魚の入手は諦めたのであった。
よく考えてみると、こうしたニューフェイスは最初こそリリースの数は少ないが、すぐに出回る数も増えて入手し易くなるものだ。
実際、この読みは当たっていて、この2ヶ月後には、醜い争奪戦に参加しなくても、コイベタのクラウンテールを入手できるようになった。
しかし、自分がこの店でコイベタのクラウンテールを見つけたのは、入荷してすぐではなく、翌日であった。

白地をベースとして、各ヒレに入る赤い色彩がアクセントとなっている個体。頭部後方に入っている赤いスポットがもう少し多ければ、更に美しい個体になると思われる。眼の虹彩が赤いので、精悍な感じに見える。

在庫数は全部で7匹程、見た感じだと良い個体はすでに抜かれてしまっている。
この中で何とか撮影に使えそうな個体は、5匹程だけである。
本当は次の入荷日を聞いておいて、一番にセレクトしたかったのだが、もう二日後に日本に帰国しなければいけない。
時間がないので、悔しいが妥協するしかない。この時は、撮影用として在庫全部を購入した。次の機会にもっと良い個体は得る事ができるであろう。
これだけいれば、日本のベタマニアにコイベタのクラウンテールを紹介する事ができる。今回はそれで十分である。

コイベタというよりも、マーブル系の魚に見える個体であるが、頭部の辺りの色彩にはコイベタの血筋を感じる。今回紹介している個体すべてに言える事だが、クラウンテールとしての体型は、まだレベル的はかなり低い。今後色彩と共に改善すべき点であろう。
白地に赤が入った個体。これで体側に黒いスポット模様でも入れば、かなりコイベタらしくなるのだが。今回紹介した個体の中では、一番体型的には整った個体と言える。

と言う事で、2ヶ月越しでコイベタのクラウンテールを入手し、撮影したのである。
撮影用のモデルを入手するには、お金の他にこのような労力も必要なのだ。
さて、実際に入手したコイベタのクラウンテールだが、その質は様々であった。
誰が見てもコイベタのクラウンテールと呼べるレベルの魚は1匹だけであった。
その他は、まだ品種としての完成形には達していないと思われるレベルである。
白ベースの体色の個体は、明らかにコイベタの系統と思われるが、コイベタと呼ぶには相応しくないようなマーブル系の魚も混ざっていた。

体色もまだまだだが、クラウンテールとしての体型はどの個体もまだまだである。 まだ品種として出始めなので、これから体色、体型共に洗練されていくのであろう。 今回は新品種の紹介として、自分的には妥協したモデルの個体を撮影したが、今年また機会があるようなら、もっと完成系の個体を紹介したいものである。

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